大安寺は、奈良時代に南都七大寺と称された教科書にも出てくる有名なお寺の一つです。当初は七重の塔を有し、東大寺に対して「南大寺」とも異称された巨大な伽藍の姿を誇っていました。でも平安時代以降は徐々に衰微し、現在の境内は旧境内の一部を占めるに過ぎませんが、旧境内全域が国の史跡に指定されており、建築行為などには厳しい規制がしかれています。
そのなかで、この護摩堂と、ほぼ同時に西脇に竣工した催事準備棟という2つの建物の設計監理を、当事務所で担当させていただきました。ただそのためには、事前に奈良市の文化財課や文化庁との長期にわたる複雑な折衝が必要でした。
さらには工事の前提として境内全体の整備計画を求められ、元奈良文化財研究所所長で斯界の大御所として有名な鈴木嘉吉先生を座長にして、境内整備委員会が立ち上げられ、そこで計画の内容が了承されて、ようやく工事にいたりました。
また工事前には建物前で発掘調査が二度も行われ、旧伽藍の回廊の柱跡が新たに発見されるという朗報があり、この護摩堂の位置も精確にその秩序に載せています。また護摩堂の実施図面は、着工前には鈴木先生にもていねいに目を通して頂き、いくつか貴重なご示唆をいただくこともできました。
<書きました鈴木嘉吉先生は、2022年12月16日に93歳で逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表する次第です。>
- 面積
- 敷地面積 :9,062.13㎡ / 2,741.3坪
建築面積 :82.09㎡ / 24.8坪
延床面積 :58.66m2 / 17.7坪
- 用途
- 寺院
- 構造
- 伝統木造
- 階数
- 平屋
- 施工
- 蓜島工務店
- 竣工
- 2012年9月